上田誠也先生がお亡くなりになられました
日本地震予知学会名誉会員の上田誠也先生が2023年1月19日ご逝去されました。93歳の大往生でした。ここに改めてご冥福をお祈りいたします。
上田先生はプレートテクトニクス研究における世界のトップランナーのお一人でした。特に顕著な業績として、プレート運動の原動力の大部分は周囲より重たいスラブが重力によって沈み込む事が支配的である事を初めて示しました
(Forsyth and Uyeda, 1975)。
また1971年に初版が発刊された『新しい地球観』は、プレートテクトニクスの啓発書として、極めて良く書かれていました、日本でも最終的に80刷を超える増刷となっただけでなく、英語でも出版され、その後、19ヶ国語に翻訳されたと伺っています。これが『The
New View of the Earth』です。
すでに絶版となっている事、日本語版の出版から50年以上が経過している事から、特別にPDFを以下に公開させて頂きます。
『The New View of the Earth』
上田先生は東京大学地震研究所時代には、日本列島およびその周辺海域の熱的な構造・進化の研究を精力的に実施していました。いわゆる地球熱学という分野です。
地震予知研究開始のきっかけ
1980年当時、上田先生はTectonophysicsという学術雑誌の編集長を努めておられました。そこで上田先生の人生を変える論文と出会う事になったのです。これがギリシャのVANグループとの出会いでした。
当時、地電流を用いたVANグループの地震予知に関する論文が掲載判断を2年間保留されていました。その理由は「予知の結果が良すぎる」というものでした。上田先生は実際にギリシャを何度も訪問し、VANグループと議論を行ない、「結果が良すぎる事は掲載拒否の理由にあたらない」「この論文は世の中に出すべきである」という結論に達したのです。そしてそこからの約40年間は地震予知研究に全精力を費やされる事になりました。
上田先生は地震学、地球熱学、地球電磁気学、さらには地質学にも造詣が深く、日本の地球科学の研究者として、最も国際的に広く認知されていた研究者でした。そのため、世界最大の地球物理学の国際団体である「国際測地学・地球物理学連合(IUGG),
1919年設立」の日本代表理事に就任されたり、4年に1回開催される総会を2003年、アジアで初めて札幌で開催する事に成功しました。そしてこの札幌大会の大会組織委員長が上田先生でした。開会式は天皇陛下・皇后陛下のご臨席もあり、大会は成功裏に開催されました。
また、2001年には、「電磁気学的な地震予知研究を国際的に推進すべき」という固い信念のもと、IUGG内に「地震・火山に関する国際ワーキンググループ(EMSEV)」を設立させ、初代委員長に就任しました。長尾年恭はEMSEV設立当初から事務局長(Secretary)を努め、2019年からは委員長を務めています。
https://www.emsev-iugg.org/emsev/
2024年9月には、ギリシャ・クレタ島でEMSEV総会が開催されます。この総会は短期・直前予知研究にまい進された上田先生のメモリアルの大会とする事がすでに決定しています。
参考資料
Forsyth, D. and S. Uyeda, On the relative importance of the driving forces
of plate motion, Geophys. J. R. Astron. Soc., 43, 163-200, 1975.
上田誠也, 新しい地球観, 岩波新書, 1971.
【動画】「地震予測への挑戦」 上田 誠也(東海大学教授、 東京大学名誉教授)
2002年 国立情報学研究所 高画質版
【動画】『地震短期予測の可能性と防災 』- 上田 誠也 (日本学士院会員、 東京大学名誉教授)
2013年1月26日に慶応大学で開催されたフォーラムでの講演(73分)東日本大震災の危機対応(14)
短期・直前予知に対するお考え、地震予知研究の歴史等がよくまとめられています。
上田誠也先生 EMSEV2018 開会挨拶(リモート)2018年8月ビデオ
イタリア・ポテンザで開催されたEMSEV総会での開会挨拶(最直近のビデオ, 約1分です)